遠い海の、奥深く。
大きな鯨は人知れず、
遥か昔の時代から、
地球と共に暮らしている。
何万年も、何百万年も、
地球の声を聴きながら、
宇宙の声を聴きながら、
鯨はこの世の秘密を唄っている。
鯨の歌は、どんな歌?
みんなが知ってる生命の歌。
誰も聴いたことがないようで、
生まれる前に聴いた音。
耳を澄ませば、
いつでも聴こえる子守唄。
一度聴こえれば、いつでも心に響く歌。
鯨のいる海はどこにある?
遥か遠くの深い海?
心の奥深く。
細胞一つ一つの水の中に。
足下の水たまりに。
頭上に。
見ようと思えばいつでも見れる。
聴こうと思えばいつでも聴こえる。
いないと思えばどこにもいない。
大きな海の、大きな鯨。
海の上はいつも賑やか。
朝が来て、夜が来て、風が吹き、
雨が降り、鳥が飛び、船が行く。
波はさざめき、大波小波。
四六時中、波を乗りこなすのは難しい。
海の中に潜ってみれば、
そこは静かで無限の世界。
自分だけの真実の宝庫。
光も音も温度も変わり、
閉ざされた感覚と引き換えに、新しい扉が開く。
人間は、
海の上のことを「社会」と呼ぶらしい。
さざめく波のことを、「心」と言うらしい。
鯨は地球の守り人。
宇宙の叡智を蓄えた、宇宙図書館の番人。
海の深くに潜ってみたら、鯨に会えるかもしれない。
ふと我に帰ったら、あなたが鯨かもしれない。
もしかしたら、鯨自身が図書館かもしれない。
自分だけの海に深く深く潜っていけば、
出会う魚や泡ひとつひとつに、
真実が見つかるかもしれない。
底に沈む砂一粒に、世界の全てがあるかもしれない。
一人一人の心の中にある深い海を知れば知るほど、
その海が、世界と繋がっていることを知る。
それでも鯨は、海の中だけでは生きられない。
時々、水面に出ては思い切り息を吐き、
息を吸い、海上の空気の美味しさを味わう。
空の美しさを味わう。
生きる喜びを、しぶきを上げて祝う。
水面に現れた鯨の動きが、風になって、誰かの元へ届く。
その風と出会った人は、海の下の世界を知り、
海に潜り、また自分だけの鯨と出会う。
〜🎶 〜♪♬♩ 〜♫ .。
水は記憶装置。
海は貯蔵庫。
全ての記憶を持っている。
人間の身体は、7割が水。
人は皆、自分という海を持っている。
地球の水は、全てで一つ。
自分という媒介を通して深い海に潜れば、
あらゆる知識に繋がれる。
そこにはあらゆる記憶があるけれど、
その記憶は、言語ではない。
言語はただのシンボル。
人間が理解する為の変換装置。
目と耳のための道具。
海へ潜るための錨。
または水中メガネ。
水面へ戻るためのロープ。
扉を開けるための鍵。
風に乗せるための船。
風に乗って届いた言語という結晶を
また自分の海に溶かせば、
言葉の奥にある隠れた宝を見ることが出来る。
鯨は、案内人。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
鯨みたいな本を作りたいなぁと思って、
風鯨社という名前をつけました。
これからどんな本たちが生まれるのか分かりませんが、
海を自由に泳ぐ鯨の群れのように
たくさんの個性ある本が生まれたら良いなと願います。
風に乗って想いが届きますように。
読んでくれてありがとうございます。
風鯨社 代表
鈴木美咲
出版業界未経験で2021年にひとりで始めた、小さな出版社です。
instagram ▶︎ fugeisha
twitter ▶︎ fugeisha